「生成AIで業務効率化できると聞くけれど、どの仕事から、どう始めればよいか分からない」
そんな中小企業の経営者・総務担当者に向けて、生成AIで業務効率化を進める方法を解説します。
結論から言うと、1つの仕事を工程に分け、AIに任せる工程・人が確認する工程・任せない工程を決めてから試す進め方が始めやすいです。
例えばメール返信なら、下書きはAIに任せ、日付や数字は人が確かめ、送るかどうかは人が決めます。
総務省の情報通信白書の企業アンケートでは、回答した日本の企業の約7割が議事録やメールの作成補助に生成AIを使い、効果を実感しているという回答も約7割でした。
1つの仕事を数人で短い期間試すだけなら、事務が少人数の会社でも、ChatGPTなど今使っているチャットAIで始められます。
すぐに考え方を知りたい方は工程に分ける考え方へ、進め方を確認したい方は進める4つの手順へ、お進みください。
Hot Consultingの温井です。
東海地域を中心に、生成AIの研修と導入の伴走型コンサルティングをしています。
ということで、2026年10月23日に確認した公式資料をもとに、次の順で整理しました。
- 国の調査で見る、効率化の効果を感じやすい仕事
- 仕事を工程に分け、AIに任せる範囲を決める考え方
- 1つの仕事から試して広げる4つの手順
- 生成AIに作業を任せる仕組みが出てきた、2026年秋の動き
自社の場合はどう進めればよいか知りたい方は、無料相談をご利用ください。
生成AIで業務効率化できる仕事を、国の調査で見る
生成AIの効果を感じやすいのは、議事録やメールの作成補助です。
総務省の令和8年版の情報通信白書には、日本を含む4か国の企業に尋ねたアンケートの結果が載っています。
以下の数字は、アンケートに回答した企業の中での割合です。
日本の全企業の割合ではなく、中小企業だけを集計した数字でもない点に注意して読んでください。
議事録・メール作成補助は、活用も効果の実感も約7割
回答した日本の企業で、生成AIの活用が最も多かった業務は「議事録・メール作成補助」で、約7割でした。
情報通信白書の生成AIの業務利用状況によると、次に「営業・販売」が約6割、「社内ヘルプデスク」が約5割と続きます。
同じ調査で、何らかの業務で生成AIを利用していると答えた割合は、日本で86.4%でした(「わからない」と答えた企業を除いた割合)。
導入の効果を実感していると答えた割合も、「議事録・メール作成補助」が約7割で、ほかの業務より目立って高い結果でした。
議事録やメールは、下書きをAIに任せ、人が読んで直す分担がしやすい仕事です。
最初に試す仕事に迷ったら、この2つを候補にすると、効果を確かめやすくなります。
日本の企業は、生成AIを「作業時間の短縮」の手段とみている
同じ白書の、生成AIの活用により生じうる影響では、日本の企業は「作業時間の短縮などによる業務の効率化」を61.6%で最も多く挙げました。
「製品・サービスの質の向上」は32.2%、「人員不足の解消」は26.8%でした。
調査したほかの3か国では「質の向上」が最も多く、日本は業務効率化の文脈でとらえる傾向がうかがえます。
作業時間の短縮は、この調査で日本の企業が最も多く挙げた効果の見方です。
そのうえで、浮いた時間を顧客対応や提案の質を高める作業に回せば、ほかの3か国で最も多く挙げられた「質の向上」にもつながります。
作業時間の短縮を目指すなら、どの作業の時間が減ったのかを、工程ごとに確かめられる形で始めることが大切です。
調査の数字は目安として、自社でどれくらい減るかは、4つの手順の手順3のように記録して確かめましょう。
生成AIの業務効率化は、仕事を「工程」に分けて考える
業務効率化は、仕事を丸ごと任せるのではなく、「どの工程をAIに任せるか」で考えましょう。
1つの仕事は、いくつもの工程の組み合わせでできています。
工程に分けると、AIに任せやすい部分と、人が判断すべき部分が見えてきます。
仕事を丸ごと任せようとすると、止まりやすい
仕事を丸ごと任せようとすると、任せられない部分が気になって、試す前に止まりやすくなります。
例えば「見積書の作成をAIに任せる」と考えると、金額の判断や社外への送付まで含まれてしまいます。
金額を間違えたら困る、取引先の情報を入力してよいか分からない、といった心配が先に立ちます。
一方で見積書の作成にも、依頼内容の整理や添える文面の下書きのように、AIに任せやすい工程があります。
工程に分けておくと、「金額は人が決める」「文面の下書きはAIに任せる」と、部分ごとに決められます。
心配な工程は人が受け持ったまま、任せやすい工程から効果を確かめられるのが、工程に分ける利点です。
社員に説明するときも、「この工程だけAIを使う」と伝えれば、受け入れてもらいやすくなります。
工程ごとに「任せる・人が確認する・任せない」を決める
工程は、次の3つに分けると整理しやすくなります。
- AIに任せる:情報の整理、文章の下書き、要約、資料の検索
- 人が確認してから使う:社外に出す文面、数字を含む資料、顧客に関わる判断の材料
- AIに任せない:金額や条件の決定、契約、社外への送付の最終判断

下書きはAIに任せ、できた文面を人が確認する、というように、確認は別の工程として置きます。
この3分類は、当社が分かりやすいように分けた一例で、会社の仕事に合わせて変えて構いません。
国のAI事業者ガイドライン(第1.2版)は、AIの判断を人が承認する場面で、承認する理由を自分で考えることの大切さに触れています。
「人が確認してから使う」工程では、何を見て確認するかまで決めておくと、確認が形だけになりません。
もう1つ、先に決めておくことがあります。
顧客の情報や社外秘の資料を入力してよいかは、ChatGPTの情報漏洩対策の記事も参考に、先に決めておきましょう。
工程に分けた例:メール返信・会議の記録・見積書・納期の回答
よくある4つの仕事を、工程に分けた例です。
実際の工程は会社ごとに違うので、自社の仕事に置き換えて読んでください。
| 仕事 | AIに任せる工程 | 人が確認してから使う工程 | AIに任せない工程 |
|---|---|---|---|
| 取引先へのメール返信 | 届いたメールの要点の整理、返信文の下書き | 下書きの内容と言い回し、日付や数字 | 送信するかどうかの判断 |
| 会議の記録 | 録音や会議メモからの要約、決まったことの一覧 | 発言の取り違えがないか、担当者と期限 | 社外に共有するかどうかの判断 |
| 見積書の作成 | 依頼内容の整理、過去の見積の検索、添える文面の下書き | 数量や単価の転記、計算の結果 | 金額と条件の決定、取引先への送付 |
| 受注・納期の問い合わせへの回答 | 問い合わせ内容の整理、回答文の下書き | 在庫や納期の数字、回答の内容 | 納期の約束、値引きなど条件の判断 |
表のように分けると、同じ仕事の中でも、AIに任せられる工程がいくつかあると分かります。
金額・数量・納期のような数字は、AIに確定させず、人が元の資料で確かめて決めます。
効果を確かめるときも、「下書きにかかる時間が減ったか」のように、工程ごとに見られます。
受注の入力や在庫の確認、請求書の突き合わせのように、社内のシステムや数字が中心の仕事は、最初の候補から外して構いません。
まずは文章を作る工程から始め、下書きに数字が出てきたら、元の資料と1つずつ照らし合わせます。
例えば返信文の下書きなら、「次のメールへの返信文を、ていねいな言葉で下書きしてください。日付と金額は空欄にしてください」のように頼むと、数字の確認を人に残せます。
生成AIで業務効率化を進める4つの手順
業務効率化は、仕事の一覧を作る→1つの仕事を工程に分ける→試して記録する→広げる、の順で進めると定着しやすくなります。
4つの手順は、中小企業で小さく始めるための整理です。
最初から全社で始めず、1つの仕事と少人数から試します。

1.仕事の一覧を作り、最初に試す仕事を1つ選ぶ
まず、社員が日々どんな仕事に時間を使っているかを書き出します。
並べる項目は、例えば仕事の名前・だいたいの頻度・担当者・文章を作る仕事かどうかの4つで十分です。
集めるときは、担当者に1人15分ほど聞くか、1週間の仕事をメモしてもらうと、手間をかけずに集められます。
一覧ができたら、次の3つがそろう仕事を1つ選びます。
- 頻度が高い(毎日や毎週ある)
- 毎回似たやり方で進める
- 間違えたときの影響が小さい
3つそろう仕事がなければ、2つ当てはまる仕事から選んでも構いません。
迷ったら、国の調査で効果を感じる企業が多かった、議事録やメールの仕事から始めるとよいでしょう。
社長や担当者が「この仕事に時間を取られている」と感じているものも、候補になります。
一覧を作る時間が取れなければ、メール返信か会議の記録から始めて構いません。
2.選んだ仕事を工程に分け、AIに任せる工程を決める
選んだ仕事を、始めから終わりまでの工程に分けます。
工程ごとに、先ほどの「任せる・人が確認する・任せない」のどれに当たるかを決めます。
使うAIは、ChatGPT・Gemini・Copilotなど、会社ですでに使っているもので構いません。
まだ会社で契約していない場合は、試す前に、会社として使うアカウントと、入力してよい情報の範囲を決めておきます。
工程を分けるときは、実際にその仕事をしている人に聞くのがいちばんの近道です。
書類の上の手順と、実際の進め方は違うことがよくあるからです。
人が確認する工程では、誰が、何を見て確認するかまで書いておきましょう。
3.少人数で試し、かかった時間と直した箇所を記録する
決めた工程を、少人数で期間を区切って試します。
例えば2週間、2〜3人で試すくらいの大きさなら、普段の仕事と並行して進められます。
始める前に、入力しない情報・確認する人・記録する場所の3つだけは決めておきましょう。
試す間は、例えば、かかった時間・AIの出力を直した箇所・迷った点の3つを、試した作業ごとに表計算のシートへ1行ずつ記録します。
記録が負担なら、最初はかかった時間だけでも構いません。
AIを使う前のやり方でかかっていた時間も、分かる範囲で書いておくと比べやすくなります。
時間が減っても、直す手間が増えていれば、工程の分け方を見直す合図です。
迷った点は、AIへの頼み方や、社内ルールに足す項目を考える材料になります。
記録が残っていれば、社長や他の部署に効果を説明するときの根拠にもなります。
報告するときは、例えば1回あたりの時間・回数・直した件数・数字の誤りがあったかを並べると、効果と注意点が一度に伝わります。
1回あたりで減った時間に月の回数を掛ければ、月に減った時間の目安になります。
4.社内ルールにまとめ、ほかの仕事に広げる
試して効果が確かめられたら、工程の分け方と確認のしかたを、社内ルールや手順書にまとめます。
社内ルールをこれから作る会社は、日本ディープラーニング協会の「生成AIの利用ガイドライン」のようなひな形も参考になります。
そのうえで、次に試す仕事を一覧から選び、同じ手順を繰り返します。
1つの仕事で進め方が固まると、2つ目からは早く進められます。
社員が自分の仕事を工程に分けられるようになると、効率化を会社全体に広げやすくなります。
業務の洗い出しからツール選び、定着まで伴走する AI導入コンサルティングの内容とプラン料金は、コンサルティングページでご覧いただけます。
最新の動き(2026年10月):生成AIの業務効率化で、作業を任せる仕組みが出てきた
2026年秋には、OpenAIとGoogle Cloudが、生成AIに「答える」だけでなく決まった作業を任せる仕組みを発表しました。
どちらも、管理者が許可した範囲でAIに作業を任せる仕組みです。
最初の1つの仕事を試すだけなら、これらの新しい機能は必要ありません。
手順を一通り試したあとで、任せる範囲を広げるときの参考にしてください。
ChatGPT Businessは、チームの定期的な作業を任せられるようになった
OpenAIは2026年9月29日、ChatGPT Businessで、チームの作業を定期的に実行できる機能を案内しました。
この機能は、会社が承認した外部サービスとの接続を使います。
その接続は管理者が設定します。
SlackやMicrosoft Teamsの中で、@ChatGPTに作業を頼める機能も発表されました。
この@ChatGPTの機能は、組織が導入して有効にし、つないだアカウントの権限によって、できる操作が決まります。
ChatGPT Businessのリリースノートには、日本で使えるかの記載はありません。
どの契約で使えるかとあわせて、自社の契約と管理画面で確認しましょう。
この機能のように定期的に実行する使い方を考えると、決まった時期に毎回同じやり方で行う作業ほど、AIに任せる候補になります。
Gemini agentは、権限と利用額の上限を決めて作業を任せる
Google Cloudは2026年10月9日、仕事のための汎用エージェント「Gemini agent」を発表しました。
エージェントとは、目標に向けて自分で手順を考え、作業を進めるAIのことです。
Google Cloudの発表では、エージェントごとに専用のIDを持たせ、必要最小限の権限だけを与える考え方が示されています。
権限は組織のセキュリティ管理者が承認し、利用額には上限を設けられます。
なお、日本で使えるか、どの契約で使えるかは、この発表には書かれていません。
導入を検討する会社は、自社の契約と管理画面で提供状況を確認しましょう。
製品が違っても、「どの作業を、どこまでAIに任せるか」を会社が決める点は共通です。
新しい機能を使うときも、手順2で分けた工程ごとに「任せる範囲を広げてよいか」を確かめましょう。
生成AIの業務効率化でよくある質問
社員に教える時間がなくても始められますか?
はい、最初から全員に教える必要はありません。
1つの仕事を、その仕事の担当者を数人に絞って試すところから始めれば、教える相手も内容も絞れます。
試した人が、工程の分け方とAIへの頼み方を手順書にまとめておけば、次の人はそれを見ながら始められます。
教える内容も、「この工程だけAIを使う」「この情報は入力しない」「出力はこの人が確認する」の3点に絞ると、短い時間で伝えられます。
全員に一度に広げるのは、1つ目の仕事で進め方が固まってからで十分です。
まとめて学ぶ時間を取れるなら、社員向けの研修を使う方法もあります。
情報漏えいが心配です。何から決めればよいですか?
まず、AIに入力してよい情報と、入力しない情報を決めましょう。
AI事業者ガイドライン(第1.2版)も、AIを使う側に、個人情報や機密情報を不適切に入力しないことを求めています。
あわせて、会社で契約したアカウントを使うか、入力した内容が学習に使われない設定になっているかも確かめます。
契約や設定で確かめる点は、ChatGPTの情報漏洩対策の記事で詳しく整理しています。
工程に分けておくと、「この工程では取引先の名前を入れない」のように、入力する情報も工程ごとに決められます。
議事録やメールで試すときも、取引先の名前や金額は入れないなど、入力する情報を決めてから始めると安心です。
Geminiを使っている会社でも、同じ進め方でよいですか?
はい、工程に分けて任せる範囲を決める考え方は、使うAIが違っても同じです。
ChatGPT・Gemini・Claudeなど、会社で契約しているAIに合わせて工程ごとの使い方を決めます。
違いが出るのは、どの機能で、どこまでの作業を任せられるかです。
Geminiでの業務活用については、Gemini研修で学ぶ業務活用の記事でも紹介しています。
どのAIを使う場合も、機能と提供状況は、契約しているプランの公式情報と管理者の画面で確かめましょう。
まとめ:工程に分けて1つの仕事から試し、研修で広げる
最初の1つは、議事録やメールの仕事から
生成AIで業務効率化を進めるなら、1つの仕事を工程に分け、AIに任せる工程・人が確認する工程・任せない工程を決めてから試すことから始めましょう。
国の調査で、活用も効果の実感も多かったのは、議事録やメールの仕事でした。
仕事の一覧を作り、1つの仕事を少人数で試し、時間と直した箇所を記録して広げましょう。
新しい機能が出て、AIに任せる範囲を広げるときも、工程ごとに人が確認する場所を決めておけば、安心して進められます。
工程の分け方は、研修で自分の職種に近い業務を題材に練習できる
工程の分け方は、自分の職種に近い業務を題材にした研修で練習できます。
工程に分けて任せる範囲を決めるのは、慣れるまで時間がかかる作業です。
まず自社で1つの仕事を試し、工程の分け方に迷ったときや、社員に広げるときに研修を使う方法もあります。
当社の研修のうち、生成AIビジネス活用研修(営業事務・バックオフィス業務のDX)は、全7回・15.75時間で、対面またはオンラインで受講できます。
第1回で「バックオフィス業務の工程の整理と、生成AIの機能の割り当て」を学び、第6回で「担当業務の工程分析と、自動化する範囲の判断」を扱います。
第7回の業務適用演習では、「想定業務での実行と検証」と「実行結果の検証と、他の業務への展開の判断」を行います。
演習は、受講される方の職種の業務を想定した、講師が用意する題材で行います。
GeminiやClaudeを使う会社向けにも、第1回・第6回・第7回で同じ流れ(工程の整理→工程分析→業務適用演習)を学ぶコースがあります。
皆さんの会社では、生成AIに「どの仕事の、どの工程を任せるか」を決めていますか?
- 自社の場合はどう進めればよいか知りたい方は、無料相談をご利用ください。
- 社員向けの「生成AIビジネス活用研修」の内容と受講料は、研修ページでご覧いただけます。
- 業務の洗い出しからツール選び、定着まで伴走する AI導入コンサルティングの内容とプラン料金は、コンサルティングページでご覧いただけます。
